未だ男尊女卑が根強い日本
今から約50年前、1972年に日本では男女雇用機会均等法が制定され、女性であることを理由に就業上で不利益となる差別をしてはならないとされました。また、それから約10年後、1981年に世界では女子差別撤廃条約が締結され、男女同権を得る為に差別撤廃義務を各国が約束しました。
それから相応の年月が経過した現代、最近のニュースでは『女性の多い会議は時間がかかる』と差別的な発言をした森喜朗会長が世界中からバッシングを受けオリンピック組織委員会から辞任に追い込まれるなど、かなり人々の意識は変わって来たように思います。
しかし、各国と比較するとまだまだ日本には男尊女卑の根が色濃く残っているのではないかと思います。今回はそんな話を記事にしてみました。
「社内は昭和です。今どき??と思うことが多かったです。日中の電話は女性社員しか取っていませんでした。ゴミ掃除等、昭和の女性がやっていたと思われることは女性社員がやることになっていました」(セールスエンジニア 20代後半 女性 正社員 年収350万円)
「本社にいる女性社員はほぼ全員一般職でした。毎日決まった時間に担当内でお茶汲み当番があり、自分と社員のお茶をいれていました。結婚などを機に辞める方も多く、腰掛けで勤めるにはよい、よくも悪くも昭和的な会社でした」(財務・会計関連職 30代前半 女性 派遣社員 年収250万円)
転職サイト『キャリコネ』より
日本の男女格差は発展途上国並み
世界経済フォーラムという世界中のエリートが組織する国際機関が存在します。この機関は毎年世界各国の男女格差指数というものを発表しており、社会情勢の改善に役立てています。日本は世界の国と比べてどの辺の位置にいるのでしょうか。
平等順位 | 国名 | 豊かさ順位 | 地域 |
1 | アイスランド | 4 | ヨーロッパ |
2 | フィンランド | 11 | ヨーロッパ |
3 | ノルウェー | 1 | ヨーロッパ |
11 | ドイツ | 6 | ヨーロッパ |
16 | フランス | 26 | ヨーロッパ |
23 | イギリス | 13 | ヨーロッパ |
24 | カナダ | 16 | 北米 |
30 | アメリカ | 17 | 北米 |
63 | イタリア | 29 | ヨーロッパ |
81 | ロシア | 52 | ヨーロッパ |
101 | インドネシア | 107 | アジア |
102 | 韓国 | 23 | アジア |
107 | 中国 | 85 | アジア |
117 | ガーナ | 138 | アフリカ |
118 | ギニア | 178 | アフリカ |
119 | アンゴラ | 148 | アフリカ |
120 | 日本 | 19 | アジア |
121 | シエラレオネ | 182 | アフリカ |
122 | グアテマラ | 127 | 中南米 |
130 | ブータン | 129 | アジア |
140 | インド | 131 | アジア |
150 | イラン | 70 | 中東 |
152 | シリア | 151 | 中東 |
156 | アフガニスタン | 169 | 中東 |
このように、世界には約200ほど国がありますが、日本は120番目と非常に低い位置にいることがわかります。先進国の中ではダントツのぶっちぎりで最下位です。ちなみにこれらの順位は男女を比較して『賃金は同じくらいか』『教育を受けられる機会は同じくらいか』『平均寿命は同じくらいか』『国会議員の数は同じくらいか』といった基準で求められています。
豊かさの順位も併記しましたが、こちらは人間開発指数という値を基準にしています。具体的には保健、教育、所得に焦点を当ててランキングにしたものです。(例え平均所得が高い国でも寿命が短かったら豊かな国とは言えないということです)
日本は人間開発指数が19位と高い位置にいますので、かなり豊かな国だと言えます。それでも男女格差指数がアフリカの発展途上国群の真ん中あたりに位置しているというのは、いかに日本がジェンダーバランスについて遅れた文化なのか窺い知ることが出来ます。女性問題について配慮し、改善を実施する力があるのにそれが出来ていないということです。
日本の男女格差が大きい理由
何故これほど日本の男女格差指数は低いのでしょうか。主な原因は政治面の問題にあります。皆さんご存じの通り、日本では女性の首相が存在したことはありません。そうでなくても、女性の議員は全体の10%くらいしか存在しません。国の舵取りをしているのは旧態依然として男性がメインであることが分かります。
改善策として政治分野における男女共同参画推進法が2018年に成立しましたが、未だ女性の立候補者は少ないのが現状です。施工後初の参議院選(2019年)で男女の割合を均等にしたのは社民、共産、立憲だけで、自民党、公明党は相変わらず10%台でした。
次に大きく先進国に遅れを取っている項目が経済面です。男女を比べた時の収入の格差が大きく開いています。OECDの発表によると世界で一番賃金の男女格差があるのは韓国、次いで日本。(OECD加盟国のみ)
これの背景には女性管理職の少なさが指摘されています。お偉いさんになれる女性がめちゃくちゃ少ないのです。国家公務員で言えば本省課長室長相当職で約3~4%程度。課長補佐・地方機関課長が約8%程度。民間でも部長クラスの女性は6%程度、係長クラスでやっと16%程度になります。
これの主な原因は『男は仕事、女は家』という古来の考え方からまだ脱却出来ない部分があるのと、『女性は出産や結婚を機に退職してしまうので使い辛い』といった意識が背景にあるとされています。
この辺はある程度働いた経験があれば直観的に理解出来ると思います。例えば子育て中のOLに単身赴任を命じるケースってほとんどありません。命じられるのはほぼ100%男性です。また、最近では『イクメン』なんて言葉が登場して来ましたが、出産を機に育休を取るのもほぼ女性です。
“終身雇用”を前提とする正社員雇用を守るため、非正規雇用との処遇格差が大きくなり、“終身雇用”と表裏一体の長時間労働・会社都合の転勤は、「男は会社・女は家庭」という性別役割の固定化を前提としており、女性の多くが非正規雇用で働くことになる。加えて、女性は正社員で働いても、結婚や出産を機に退職するとの想定のもと、昇格・昇給が抑制されてきた。
引用元:コロナショックが促すジェンダー平等(日本総研/2021)
これは日本の遅れている育児事情が尾を引いている部分もあります。ヨーロッパ諸国やアメリカでは積極的に企業内保育園などを導入し、子供を持つ女性でも無理なく働ける環境が整えられています。社会が子育てに参画するのは当たり前、貴重な女性人材を確保するという考え方ですね。
打って変わって、日本では小池百合子知事の活躍などによってかなり減少しましたが今だ待機児童問題があり、『保育園に落ちたから仕事辞めなきゃ』という状況に追い込まれる女性がいます。また、パートやアルバイト、派遣社員など非正規雇用の割合も女性の方が圧倒的に高いのが現実です。
引用元:https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20200812-00191949
何故これほど男女格差が根強いのか
どうして日本はこれほど男女格差が開いているんでしょうか。それには戦後あたりの男尊女卑思想が根強く残っているのではないかと思います。
卑弥呼や主神である天照大神が女性であったように、古代日本では女性の地位はそれなりに確立されていました。奈良時代の家屋は女性が受け継ぐものでしたし、結婚についても男性が女性の家へ3日間ほど通い、そこで女性が『やっぱ嫌』と言えば成立させることは出来ませんでした。いわゆるお試し同棲ですね。
他にも、日本では妻側から離婚をすることが出来るようになったのは1873年の太政官布告からです。それ以前は夫から妻へ三行半(みくだりはん)という書状を出さないと離婚が出来ませんでした。つまり夫は自由に離婚を提示出来るけど妻は出来ない、ということですね。これの救済措置として駆け込み寺(縁切寺)という仕組みが江戸時代にあったことは皆さんも聞いたことがあるでしょう。
これだけ聞くと男尊女卑に思いますが、逆に言えば三行半を受け取ってもらえないと男性も再婚出来なかったということです。もし妻側が『私は三行半を受け取っていない』とゴネれば離婚出来ないので、妻に三行半を受け取った証文を書いてもらう夫も多かったようです。
更には、妻側がいつでも自分の意思で離婚出来るように、『自分に不祥事があれば離婚を認める』と先に三行半を書かせてから結婚する夫婦(いわゆる先渡し離縁状)もいたそうな。
もちろんこれだけで江戸時代の女性の地位が高かったとは言えませんが、昔は全ての女性が道具のように扱われていたワケではなく、ある程度対等であったように思えます。
ではいつから男尊女卑が始まったのか。歴史を調べると、男性の方が優位に立ってきたピークは明治維新から戦後の日本辺りまでなのではないかと思います。
例えば明治民法では、父親が日本人である場合は子供も日本人として認められましたが、母親が日本人で父親が外国人の場合は日本人だと認められませんでした。また、女性だけ参政権がなく、投票する権利もありませんでした。それどころか政治集会に参加するだけでも罰金です。
『良妻賢母』という言葉が代表しているように男は仕事、女は家という家父長制度の思想が強く表れ、封建的な社会の中で女性は家事に従事することを強いられたのです。明治民法の中では女性は財産の管理権がなく、離婚する際の財産分与請求権もありませんでした。経済的な自立も不可能だったのです。これには戊辰戦争や日清戦争を経て、男性の力が物理的に示された背景も影響しているのではないかと思います。
この明治民法による男尊女卑は大正から昭和初期まで色濃く残り、現代では諸外国の影響を受けて払拭されつつありますが、それらの教えを受けて戦後の日本を生きて来た団塊世代は現在70歳~80歳くらい。雇用年齢が長期化している日本ではやっと最近リタイアしたかなというタイミングです。そしてその子供たちである団塊ジュニア世代は42~45歳なのでまだまだ現役です。私が小さい頃も小学校の運動会は『父兄参観』という表現でした。『父母参観』ではありません。現代では『父兄』という言葉は放送禁止用語らしいですね。
今となっては笑い話ですが、私の父方の祖母は大正生まれでした。戦時中は満州国で従軍看護婦として勤めていたそうです。その祖母が当時、父(息子)と結婚する時に母に出した条件が『男の子を産んだら結婚しても良い』というものだったそうです。さすがに父が上手く執り成したそうですが、とんでもない話です。
また、他にもご紹介したい面白い話で『どうしてサザエさんが流行ったのか』という話題があります。
サザエさんのテレビ放映第一回は1969年。当時はまだこのような封建的な風習が残っており、『母親でも息子には~さん付け』『夫が帰ってきたら三つ指ついてお出迎え』というのがまかり通っていた時代です。そんな時代ですから、サザエさんがホウキを構えて『コラ~カツオ~!』と弟を追い回すシーンはその時代の人々にとって衝撃で、いかにも痛快だったそうです。国民的アニメが台頭した背景にはそんな世情もあるのですね。
まとめ
- 現代日本社会でも男尊女卑の思想は根強く残っている
- 日本社会の男女格差指数はアフリカの発展途上国並み
- 男尊女卑の思想が広まったのは明治~戦後にかけて
現代の日本では低迷する景気も相まって、共働き家庭が当たり前になって来ています。夫の収入だけでは家族を養えなくなって来ているんですね。そんな中で女性を周辺機器みたいな扱いで就業させておくのは労働力の低下と更なる少子化を生みます。
厚生労働省の発表では、一人親世代の9割は母子家庭ですが貧困率は50%を超えており、約1割が生活保護を受けながら生活しています。これらの数字は今後のコロナショックを見越すと更なる苦境に立たされることが推測されます。
社会福祉制度を拡充し、男女間格差を無くして真の男女平等とは何かを考えるきっかけが必要なのかもしれません。
女性も活躍出来る社会が望ましいんだわさ!
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