丹沢山塊を踏破しました
前々からやりたかったけど、なかなかまとまった時間がなくて諦めてた山行。
せっかくの夏休みなので一泊二日で行ってきました。
大室山→檜洞丸→蛭ヶ岳→丹沢山→塔ノ岳→鍋割山という、西丹沢から東丹沢まで歩く壮大な計画です。
この記事では以下のお二人が登場します。
青ヶ岳山荘のオーナーさん。檜洞丸に59年登っている大ベテラン。直接お会いしなかったがテキストチャットで色々アドバイスを下さった。
青ヶ岳山荘の管理人さん。こちらも登山歴18年の年季入り登山家。写真家でもある。宿泊時にすごく親切にして頂いて、山の話をたくさん聞かせてくれた。
夏山は過酷だった
私の登山歴はわずか半年。去年の冬から始めたので本格的な夏山登山ってのは初めてでした。(七月に富士山に登ったけど、富士山は他と勝手が違いすぎるので)
山の日って八月だし、ぼんやりと“登山は夏”ってイメージがあったんですけど、Sさん曰く『少なくとも夏は丹沢山のシーズンじゃないですよ』とのこと。
それもそのはず。ものすごい過酷でした。
まず暑い、当たり前だけど暑い。
持参したタオルが汗を絞れそうなほどグッショリ。もう全身滝のような汗で、ポカリ2リットルを初日で消費してしまいました。
山小屋で調達した分を合わせると、2日間で6リットル消費しましたね。(それでも足らなかった)
あと地味に虫がウザい。
蜘蛛の巣が顔にかかったり、ハエがブンブン顔にたかってきたり。
虫除けスプレーは持っていったんですがハエには効果ないらしく、終始たかられていました。多分大量の汗でアンモニア臭がするから引き寄せちゃうんでしょうね。
あとマルハナバチが汗を舐めに来たりね。可愛いけど。歩くハニーポット状態ですね。
死を覚悟した
そんなこんなで計画よりかなり山行が遅れました。
予定では1730には山小屋(檜洞丸の青ヶ岳山荘)に到着するはずだったんですが、犬越路に到着したところですでに1700頃。
平日の西丹沢なぞほぼ無人で、心細さマックスのところに雨まで降り始めます。(天気予報は晴れなのに)
あとでSさんに聞いたところ、『夏山の午後は天気が変わりやすいので、午前中に登頂するなり山小屋に到着するのが基本』とのこと。知らんかった…。
犬越路は難所で有名です。かつて、武田信玄が犬に先導させて山越えしたことから犬越路と呼ばれてるそうですが、犬に超えられるとは思えない道です。
長い鎖場が3連続し、傾斜は60度くらい。夜だと危険だし、雨で鎖が滑るわで、『落ちたら骨折するだろうな…』っていう感じの岩場。下手すりゃ死。誰もいないし。
ただもう、下山もかなわない時間なので最後のひと踏ん張りで檜洞丸を目指して牛歩で進みました。
青ヶ岳山荘到着!
『クソがぁぁぁ!!』とか叫びながら(不審者)気合で雨の中をヤブ漕ぎして進んでいくと、もう月が出てあたりは真っ暗。
ヘッドライトを装着しようと思いましたが、夜で足元がおぼつかず、ザックを下すと装備が濡れてしまう為、山荘へそのまま直行。
ヤマップの案内だともうそろそろ到着するはず…。
ふと『何かの手違いで山小屋が休みだったらどうしよう』なんて思いが頭をよぎりました。
もしそうなったら、また鎖場を降りて犬越路の避難小屋まで戻らなくてはいけません。
そんな体力は到底なく…。
『〇〇(私の苗字)さんですか?』
そんな時、ふと檜洞丸のやや手前で前方から声をかけられました。
見ると髭を生やしたハイジのアルムおんじみたいなお方が!まさかのヒト!人間がいる!
それは山小屋番のSさんでした。もう心の底からうれしかったですね。
聞くと到着が予定より遅いので、写真撮影がてら迎えに来て下さったそう。
夜道を難なく先導して山小屋まで連れていってくれました。
宿泊客は私だけだったようで、山小屋ではSさんと私の二人きり。何も起こらないはずがなく…。
Sさんはとても話し上手な方で、色々とおしゃべりしながら大盛りカレーを出してくれました。めちゃウマ!!
すぐに濡れた服を着替えて登山靴と靴下を干し、一息ついてリラックス。ちょっとだけ持ち込んだウイスキーを飲む。
これだ…これだよ山小屋泊の醍醐味は…。
翌日は神奈川県最高峰へ
青ヶ岳山荘はグーグルの口コミが4.7と大変高評価な山小屋です。
宿泊客が私だけだったこともありますが、とても快適でした。ふかふかのオフトゥン。
(でも山小屋なので、さすがにホテルのベッドとかには負けますのでご注意をば)
翌日未明、Sさんがお気に入りの富士山撮影スポットまで連れていってくれました。
ちょうど一か月前に登頂したばかりの富士山を外側から眺め、荘厳な気持ちで出発の準備。
前日に濡れた靴下と登山靴は乾いておらず、替えを持ってこなかったことにウルトラ後悔しながら、Sさんに記念写真をたくさん撮っていただき、いざ蛭ヶ岳へと。
蛭ヶ岳は標高1673メートルと低めですが神奈川県の最高峰であり、檜洞丸よりもやや高めです。
日帰りでは制覇するのが難しい山のため、これを踏破することが今回の山行の第一目的でもありました。
再び襲い来る夏山の地獄
『すごくいい山小屋だったなぁ』と意気揚々と出発するも、一晩寝ただけで体力が全快するはずもなく、また夏山の厳しさが襲いました。
後から知ったんですが檜洞丸~蛭ヶ岳のルートは上級者向けで、岩場や鎖場がたくさんあり、犬越路に負けず劣らずハードな場所です。
しかも人通りがほぼない(出会ったのは2人だけ)ので登山道に草が生え放題で、ほぼヤブ漕ぎに近い感じです。当然一歩踏み外したら落下の危険がある場所もいっぱい。倒木もそのままです。
それでも朝早い段階だとまだ涼しかった上、日当たりがあまりないので独力で何とか進むことができ、無事に蛭ヶ岳に到着。
ここまで来ると気分は大分明るかったです。
めちゃくちゃ大雑把に言えば神奈川県最高峰を登頂したので。あとは論理的には降りるだけなので。(当然アップダウンがあるのでそうはならないんですけど)
しかも西丹沢、丹沢山~塔ノ岳あたりまで行くとかなり人が増え、安心感がありました。
やっぱ見知らぬ人とはいえ『いざ倒れたら誰か通りがかって助けてくれる』っていう気持ちだと楽になります。他力本願ですけど。
丹沢山~塔ノ岳~鍋割山
丹沢山や塔ノ岳は過去に登ったことがあるので見知った道。
なんかもう丹沢山のミヤマ山荘なんかは実家のような安心感すらありました。
ここまでいけば、後はもう下山するだけ。
木道がしっかり整備されており、犬越路のクソハードな登山道と違い歩きやすいので、体力を回復(?)しながら進める感じ。
丹沢山塊を踏破するという目的があったので、バカ尾根の途中では鍋割山へ迂回する格好で大倉バス停まで向かいました。
途中、一般道路に出た時のうれしかったことやうれしかったこと!
大げさかもしれませんが戦争から帰ってきた兵隊の気分でした。
無事に帰宅
今回の行程は全長35キロ、登り3256メートル、下り3515メートルを制覇する途方もないものであり、間違いなく私の登山歴の中で一番ハードでした。五合目から出発出来る富士山よりハード。
ぶっちゃけ『無理だったら帰ろう』という感覚で挑戦したものですが、無事にやり切ることが出来ました。
自画自賛ではありますが、この山行だけで言うと間違いなく上級者と言っていいでしょう。
そんな超絶自己達成感にトリップしながら、無事に帰宅することが出来ました。
個人的にはエルデンリングのマレニアを倒した次くらいに嬉しかったですね。
また、今回はやはり山荘が良かったのが大きかったと思います。
事前に色々とメッセージでアドバイスを下さったTさん。そして優しく気さくだったSさん。
とてもリラックスして過ごすことができました。
この青ヶ岳山荘で一晩過ごす思い出が出来ただけでも、行く価値がありました。
もうね、すっかり登山にハマっちゃうよねこれ。
筋肉痛で家帰ってから3日間は生まれたての小鹿みたいな動きしか出来なかったし、バケツ被ったみたいに汗びっしょりだったから風呂場でザック含めて全装備洗いましたけどね!
反省メモ
今回の旅路ではたくさんの教訓を得ました。
まず、夏は登山の季節ではないということ。そして山はレジャーではなく、挑戦だということ。
あとは、当たり前ですけど無理のない計画を立てることですね。
私の場合、朝の電車で駅を寝過ごして、初日の出発が予定より1時間遅れたことがダメでした。
この時点で無理に大室山を目指さず、つつじ新道から最短ルートで山荘に向かうべきでした。今後の反省。
あ、あと別の話になりますが、丹沢にヒルは全然いませんでした。
『丹沢はヤマビルだらけ!』みたいな情報をネットで得ていたので戦々恐々だったんですが、全く影も形も見かけず。
檜洞丸を59年登っているTさんも、西丹沢では全くヒルを見たことがないそうです。
雨が降った翌日、真夏の天候ということでヒルにとっては理想的な環境だったワケですが、西~東丹沢まで周回して全然大丈夫だったということは、よほど登山道から外れて長時間滞在するとか、めちゃくちゃ運が悪いとかでない限り大丈夫だと思います。
Sさんにも聞いたんですが、『ヤビツ峠でたまに報告があるくらいかな』という感想でした。
どちらにせよ出現頻度はごくまれなようです。
今度、秋の時期になったら東京都最高峰である雲取山に挑戦するつもりです。
まだまだ私の挑戦は続きます…。
人生につらいことがあったらまた行くよ、青ヶ岳山荘
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