ロシアVSウクライナの戦況まとめ

色々とまとめてみました。

総兵力について

ウクライナとロシアは兵力に圧倒的な差があり、ロシアの兵力はウクライナの4倍以上です。また、軍隊には予備役という『いざという時にだけ戦う兵士』が存在しますが、こちらもロシアは200万なのに対してウクライナは90万人しかいません。

更に、ロシアは最新の装備をジャラジャラさせていますが、ウクライナ軍は多くの兵器が旧ソ連時代からのものとなっています。先日、アメリカ軍が対戦車ミサイル『ジャベリン』をウクライナに支給するなどしましたが、それでも圧倒的な差を覆すには至っていないのが現状です。

しかし、ウクライナはゼレンスキー大統領が民間人から志願兵を募り、これに13万人以上の人たちが呼応。また、手製の火炎瓶を作って戦車に投げつけたり、『人間の盾』を作って侵略を妨害するなど、直接戦闘に参加する民間人も多くいます。中には銃がなく、ハンマーやナイフで戦う人たちも。ロシアは基本的に『民間人を攻撃してはならない』という命令が出されている為、これには手こずっているそうです。

その他、世界各国からの義勇兵が2万人以上集まるなど、各方面からの支援も見逃すことは出来ません。一方、ロシア側はベラルーシが28日に軍事支援を表明し、更なる軍備増強が図られる見込みです。

こちらがジャベリン。装甲車両の他、低空飛行のヘリも撃ち落とすことが出来る。

戦闘機について

キエフ侵攻と同時に電撃的に制空権を確保したロシア。空爆により、多くの飛行機場や滑走路を爆破しました。メインで運用する戦闘機はスホーイ35(Su-35)と呼ばれる第4+世代のジェット機です。

2014年から運用が開始された最新式で、地上車両の支援なしに単独でエンジン始動が可能。酸素供給装置により酸素の補給も不要。高度1万1000メートルでもアフターバーナーの使用無しで音速を超えて飛行することができ、高性能のCPUにより8機まで同時に交戦が可能です。

また、標的に合わせて自動で装備を提案する戦闘用人工知能システムも搭載しており、その他相手のレーダーを察知すると周波数を解析して同周波数の電波を発信、自機の位置を分らなくするディセプション・ジャミングも可能です。まさに21世紀の戦闘機という感じですね。

最新ジェット機のスホーイ35。一回の燃料補給で3600km飛べる。

一方、ウクライナの戦闘機は旧ソ連時代から更新されておらず、ミグ29(MiG-29)がメインとなっています。運用開始は1983年と、かなり古い機体です。日本ではラーストチカ(ロシア語で"ツバメ")の愛称で呼ばれています。

もちろん技術の進歩によって細かいアップグレードはされていることでしょうが、フライバイワイヤー(操縦をコンピュータが半自動でサポートする仕組み)を搭載しておらず、航続距離は1430kmとスホーイ35の半分以下。

小型で機動性に優れていますがその分搭載出来る兵器は少なく、元々安く大量に揃えるのがコンセプトの機体なので総合的な性能はどうしても劣ります。世界中の先進国が中古品を売り出しており、北朝鮮やその他政局が不安定な国々で多く配備されている機体です。

旧東ドイツが、新型機の導入に伴い要らなくなったミグ29をポーランドへ1ユーロ(約130円)で売り払ったという逸話まであります。

こちらがミグ29。50年前に設計開発された『ワゴンセール品』である。

このように、ロシアのスホーイ35が『ガンダム』ならウクライナのミグ29は『ザク』くらい性能に開きがあるワケですが、なんとウクライナではこの旧式のミグでスホーイを次々と撃ち落としているエースパイロットが存在しているらしいです。

このパイロットはキエフの幽霊ゴーストオブキエフと呼ばれ、ロシア侵攻によりウクライナ軍へ復帰した予備役パイロットだとのこと。現在までにロシア側の戦闘機を10機も撃ち落としているとのことです。

戦争は情報戦でもあるので、このパイロットがウクライナ軍の士気を上げる為に捏造されたプロパガンダである可能性も指摘されていますが、もし本当だったらスゴイことですね。

ちなみに現代の空中戦というのは『紅の豚』みたいなドッグファイトは基本的に行わず、ロックしたらミサイル発射してオシマイ、らしいです。その為、エンジン性能などの単純な数値だけでは強い、弱いは比較出来ないという説があります。まあ実際戦闘機乗ったことないので分かりませんけど。

しかしまぁ、そう考えると、このパイロットが実在して活躍している可能性も十分にあると思います。何にせよ、100倍以上の戦闘機を持っているロシアにまだウクライナ空軍が降伏していないということは、事実です。

戦車について

ロシアはドイツと並ぶ戦車大国で、多数の戦車を持っています。ウクライナと比べてその差は1万両近く。メインとなる車両はT-72、T-80、T-90などです。話は逸れますけど『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』というロシア映画はメチャ面白いのでおススメ。

中でも比較的新しいT-90は1992年より制式採用されたモデル。主砲は2A46 125mm滑腔砲で、2キロ以上の射程距離を誇ります。通常の徹甲弾や榴弾に加え、対戦車ミサイルを発射することも可能。ミサイルを撃てる戦車というのはユニークですよね。

この他、装甲は爆発反応装甲という最新式のものであり、更に対戦車ミサイルを赤外線で妨害したり、敵のレーダーを狂わせる装置を積んでおり、防御面も万全です。

T-90。ロシアはこの他にも多数の装甲車両を持ち込んでいる。

一方、ウクライナの主力となっているのはT-64と呼ばれる戦車でロシア製。こちらもやっぱりソ連時代の遺物で、1966年から正式採用されたモデルです。当時としては最新式で、複合装甲、滑腔砲、自動装填装置などを搭載していました。

T-90に比べて攻撃力も防御力も低いですが、その分重量が軽く行動距離が長いというメリットがあります。しかし自動装填装置がすぐ装填不良になったり乗員を巻き込んだりする事故が多発し、『人食い戦車』とまで呼ばれた過去を持ちます。それでなくても故障率が高くて使いにくく、ロシアではすでに退役している戦車です。

ウクライナでは2000年代よりこのT-64に様々な改修を施し、『T-64BM ブラート』という名称で運用しているそうです。

T-64BM ブラート。カテゴリとしては中戦車となる。

軍事費について

ロシアとウクライナでは軍事費に雲泥の差があります。この辺はさすが超大国ロシアといったところでしょうか。ウクライナが約6800億円に対してロシアは7兆1100億円。10倍以上も差があるワケですね。ちなみに世界最上位はアメリカで軍事費約80兆円。アメリカヤバイ。

軍事費は様々な部分に影響します。例えばロシアは潜水艦を60隻以上持っていますが、ウクライナは1隻も持っていません。その他、装備の充実具合や戦闘の練度などにも影響します。何よりロシアは大量の核兵器を抑止力として保有することが出来ています。いざとなれば潜水艦で敵の国に近づいて核ミサイルを撃ち込めるワケです。

話は変わりますが、今回の件を機に日本でも核武装論が浮上していますね。ウクライナが一方的に侵略されましたが加盟予定だったNATOは結局のところ何もしてくれません。アメリカも武器支給など裏方としての手伝いはしてくれますが、表立った派兵には至っていません。

このことから分かる…というかバレたのは『所詮、他の国はアテに出来ない』ということ。『いざ戦争が始まれば同盟や国連など無意味』ということです。自分の国は自分で守るしかない。強国相手に弱者が持ち得る抑止力、それは核です。

日本は人類史上、唯一核を落とされた国なのでその痛みや悲しみは最たるもの。非核三原則を堅持して来ましたが、もし核を保持すると周辺国への発言力が上がり、最大の防衛力を持つことが出来ます。絶対に核を使われない為に核を持つ、ということです。

昔、メタルギアソリッドっていうゲームがありましてね。その中に出てくる巨大兵器が完全自律型のコンピューターを積んでいて、『核を発射した国を探知すると報復として即時核を撃ち込む』という能力を持っているんです。この兵器はどの国にも属さず、決して止めることが出来ない。その名もピースウォーカー歩く平和

ゲームと現実をゴッチャにするのも何ですけど、こういった兵器が実現したら世界は平和になるのかなぁと思ったり。はい、めっちゃ話逸れましたね。

核の話題をタブー視するべきではないと主張した安倍元首相。

士気について

これまで紹介したように、圧倒的な軍事力の差があるロシアとウクライナ。当初ロシアが侵攻を始めた時、西側情報当局は『キエフは数時間で落とされる可能性がある』とまで述べていました。しかし結果はどうでしょうか。侵攻開始から10日以上経過した現在でも、ウクライナは徹底抗戦を続けています。

これを下支えしているのは欧州を始めとする世論がウクライナを味方していること。彼らにとってロシアは『自分たちの土地と平和を脅かす悪の大国』なのです。よく戦争には正義も悪もないという言葉がありますが、ウクライナの人々は自分たちこそに正義があると強く信じているのです。

『元コメディアンの無能大統領』と揶揄されていたウクライナのゼレンスキー大統領もそのカリスマ性を発揮しており、『私は逃げも隠れもしない。みんなとここにいる』とSNSを通じて国民を励まし続けており、その支持率は40%から91%に急上昇しています。

SNS戦略で士気を高め続けるゼレンスキー大統領。まさに現代の情報戦だ。

打って変って、ロシア側の士気はガタガタです。ウクライナの捕虜になったロシア兵によると、『ただの軍事訓練と聞いていたのに、侵略に加担させられた』、『ウクライナの人々に歓迎されると聞いていたのに、ファシスト扱いされる』といった声を聴くことが出来ます。

中には戦車を放置したまま脱走したり、わざと燃料タンクに穴を開けて侵略を遅延させようとする兵士まで出てくる始末。おまけにロシアは激しい経済制裁を受けていて、ルーブル(ロシアの通貨)の価値はほぼゼロになりつつあります。

各地で反戦デモが起きており、ロシア当局は戦争に反対する者を逮捕出来る法案を急いで可決。国営テレビではウクライナの人々に歓迎されるプロパガンダを流し、SNSへのネット接続を遮断するなど、強行的な手段を取っています。北朝鮮ならいざ知らず、ロシアの人々がこれに反発しないワケはありません。

反戦デモに参加した人を拘束するロシア当局。

これに一番焦っているのはプーチン大統領かもしれません。世界に対して『ウチは格下の小国すら落とせないような軍隊です』と発信してしまっているからです。圧倒的な軍事力をアピールするはずが完全に見当違い。このまま引き下がったのではただイタズラにロシア経済を崩壊させただけに終わります。

その焦燥感を体現するかのように、ロシア軍は民間人も含めた無差別ミサイル攻撃を開始しました。目的は変電所や水道施設など生活インフラを破壊し『兵糧攻め』をする為です。しかしウクライナの子供や老人を苦しめるような真似をしてロシア軍の良心が痛まないはずがありません。

用兵之道、攻心為上、攻城為下。心戦為上、兵戦為下。
(用兵の道は心を攻めるが上策。城を攻めるは下策である)

三国志 蜀書 馬謖伝より

この士気の差は戦争の行く末を変えるほど重要な要素です。実際、8日現在、ウクライナ南部のオデッサではウクライナ海軍がロシア軍を撃退し、また、ミコライウ州ではロシア軍に制圧された空港をウクライナ軍が奪還するなど、ウクライナ側の善戦が続いています。

一体この戦争の行く末はどうなるのでしょう。考えられるシナリオとしては、以下のパターンだと思います。

  • ロシアが短期決戦でキエフを猛攻撃して勝つ。
  • ロシアがキエフを包囲したままゆっくりとウクライナを戦意喪失させて勝つ。
  • ヒステリー状態にあるロシアが更に暴走し、NATO加盟国にも侵略して(恐らく)負ける。
  • プーチン大統領とゼレンスキー大統領が外交で解決し、平和的解決を目指す。
  • プーチン大統領が国内で失脚してロシアが事実上敗北。

一番最悪なのは核が使われるパターンですが、さすがにそれはないと思います。核を使えばロシアは中国などの共産圏からも見放されて完全に孤立無援になるでしょうから。プーチン大統領もそこまで愚かではないでしょう。何にせよ、一刻も早く両国に平和が訪れるよう祈るばかりです。

平和は人類にとって不自然な状態である