【自然の恐怖】川乗山に登山しました

雪の登山を経験してみたくて、残雪残る奥多摩は川乗山かわのりやまに登山してまいりました。

ルートは川乗橋バス停→山頂→鋸尾根Ⅰ峰→鋸尾根Ⅱ峰→鋸尾根Ⅲ峰→瘤高山→鳩ノ巣駅。

とても美しい沢の流れる川乗山。昔はこの川で海苔が取れたということで、川苔山かわのりやまと表記したそうです。

現代でも『川苔山かわのりやま』と『川乗山かわのりやま』の表記が入り混じっており、どっちもカワノリヤマで正解なんですが、本記事は『川乗山』で統一しますね。

奥多摩駅から川乗橋かわのりばし

早朝、4:30に起きて電車に乗り奥多摩駅へ。23区内から電車にして3時間30分ほど。いやぁ遠い。

早速ですがワタクシ、ここで最大のやらかしをしてしまいます。

奥多摩駅から川乗橋バス停までのバスは乗り換えに20分余裕があったので、『駅の売店で飲食物買えばいいや』と思っていたんですが、奥多摩駅って何もない。

駅前に営業中かよくわからん蕎麦屋が一軒あるだけで、コンビニなんてもちろんない。びっくり。

唯一カフェが駅内にあるが営業は11:00から。

仕方なく駅ホーム内の自販機で飲み物だけは用意して、行動食ナシで挑むことに。これはキツイ。

あと、今まで経験した山ってバス停に長蛇の列が出来てたんですが、今回はガラガラ。

私の前に10人くらいしか並んでない。

え?マジ?そんなに人気ないの?それとも冬季に登るのがおかしいの?と不安になりながらお手洗いに行ってバスを待つ。

川乗山はお手洗いが一切ないので、奥多摩駅が最後のトイレポイントになります。

まだ席に大分余裕があるバス車内。関係ないけど一つ前に座ってる白髪の紳士と後で仲良くなります。

川乗橋~百尋ひゃくひろの滝

バスは20分くらいで川乗橋に到着。

まずは40分ほど歩いて登山口を目指します。

最初の感想としては『暖かいな…』と感じました。

雪山ということで覚悟してたんですが、この日は気温も高くて割と快適。

雪なんて本当に残ってんのかぁ~?と半信半疑で歩を進める私。

やがて登山口に到着して登頂開始すると、早速ですが異様な風景が目に飛び込んできました。

え?堕ちたら死ぬやん?

そこにあるのが当然という風に10メートルほど下に見える滝つぼ。

目もくらむような高さで、堕ちたらまず助からないか大怪我するだろうなと…。

後で調べてわかったんですが、川乗橋から百尋の滝周辺は『川乗山の蟻地獄』と呼ばれるルートで、過去に滑落事故が何度も発生しているそうです。

対向者とすれ違うことが出来ないほど道幅が狭く、ロープもクサリもない。

崖がほぼ垂直なので堕ちたら捕まることも出来ない。

おまけにこの時期は落ち葉が大量に積もって浮き石を覆い隠しており、天然のトラップ多数。

人も少ないので『前の人についていく』ことも出来ない。

マジで高所恐怖症の人には無理だと思います。

画像だと遠近感がわかりにくいが、この靴の一歩前に踏み出したら30メートルくらい落下する。

ものっそいおっかなびっくり、岩肌に生えている木を必死に掴みながら歩を進めました。

周りの登山客は割とスイスイ進んでました。こいつら何者なんや?

百尋の滝到着

登頂を始めてから約1時間40分ほどで、名勝百尋の滝に到着!

底まで透き通って見える美しい水を湛えた、神秘的な光景を見ることが出来ました。

すぐ傍には、『尋守姫命』と書かれた木柱が立っていました。ヒロモリヒメノミコト、と読むんでしょうか。

調べても何の情報も出て来ません。一体何のお姫様なんでしょうね?

歴史から忘れ去られたお姫様を祀る滝…。なんかエモいですね。

百尋の滝~山頂

百尋の滝から山頂まではとても孤独な道のりでした。

それまでチラホラいたはずの登山客が全然いない。

あとで山頂に到着してわかりましたが、みんな先に行っちゃったんですね。

この辺から雪が深くなってきたので、私はチェインスパイクを着用したり、ゲイターの性能に歓喜したり、まぁなんかノロノロやってたせいで追い抜かされたみたいです。

さすがに山頂付近は雪がしっかり残っていた。

しかし…いいですねやはり。

周りは何の音もしない。鳥の鳴き声すら聞こえず、雪が音を吸収するせいか全く無音の世界。

本当にただの独りきり、GPSを頼りに山頂を目指す。たまに奇声を上げてみたりする。

ここで力尽きたらまず助けは来ない。一歩一歩自分の体力との戦い。

突然50cmくらいの積雪に膝まで足を突っ込んでこれまた奇声を上げる。

山頂手前になると急登が増えてくるんですが、そこで大自然の歓迎を受けました。

頭になんかパラパラ降ってくるなと思いきや、一陣の風が吹いて、周囲に白いカーテンが舞い上がったのです。

よく見ると、それは樹氷でした。小さな氷の幕が風に浮いていたのです。

私の存在など意に介さないかのように、自由に舞い散るダイアモンドダストは、まるでそこに氷の妖精が歌い踊っているかのような錯覚さえ覚えました。

とまあ詩的に表現してみましたが、まさに息をのむような光景でした。雪山ならではの体験ですね。

産まれて初めて見た樹氷。

山頂に到着

様々な困難を乗り越えてついに山頂へ到着!

結構早いペースだったはずですが、一緒のバスで出発した面々は先に到着してました。こいつら何なん?

しかし事前に知っていましたが、山頂には山小屋もお手洗いもなく…。

私は行動食ナシだったので大分腹が減って参ってましたが、他の皆さんはカップラーメンとかおにぎりとか食べてました。ほんとこいつら何なん?

と、そこで私に声をかける老紳士が。山頂をバックに写真を撮って欲しいとのこと。

快く引き受け、私も代わりに写真を撮ってもらいました。

「ちゃんと写真を撮っておかないとネ、奥さんに疑われちゃうんだエヘヘ」と、人懐っこい好々爺といった感じの方でした。70~80歳くらいでしょうか。

見ればザックはアーバンスタイルのデイバッグで、チェインスパイクもなし。マジすごい。その割にクッカーなどはしっかり持ってたので、きっと名のある登山家だったに違いない…。

山頂~鋸尾根のこぎりおねを経由して下山

山頂での休憩もそこそこに下山を開始。

鋸尾根Ⅰ~Ⅲと呼ばれる場所を経由してJRの鳩ノ巣駅に向かいます。

ノコギリの刃のように急なアップダウンが連続するから鋸尾根と呼ばれているらしいです。

これがね、またキツかった。

幸い下山ルートは方位の関係か雪があまりなかったんですが、「これ破線ルートじゃね?」って言いたくなるほど登山道が見えない。獣道みたいなところを下っていく。

林の中を突っ切る登山道。真っ暗になる。

迷う人が多いのか、トレースも複数に跨っており、どこを歩くのが正解なのかよくわからない。

ヤマップの注意情報にも『尾根を歩くかトラバースするか慎重なルートファインディングが必要』とあり、とても初心者が歩くような場所ではないなと思いました。写真を撮る余裕もなし。

おとなしく鋸尾根は回避して巻き道を行った方が全然ラクです。(途中、ルートを間違えて巻き道も少し歩きました)

鋸尾根を通過した後は比較的なだらかな道。しかし、周囲をスギやヒノキが囲っており、まだ15時なのに真夜中みたいな暗さでした。

登山道と市街地を隔てる熊野神社に到着。下山の無事を感謝してさようなら。

総評

もう一度登りたいか?と言われると素直にノーですね。

あまりネガキャンしたくないですが、“蟻地獄"の箇所がマジで怖すぎる。今までの山で一番恐怖を感じました。

この季節だからというのもありますが、浮き石を雪が覆い、さらにその上に落ち葉が積もっているので非常に歩きにくい。

「この橋大丈夫か?」ってくらい老朽化している木橋を渡る箇所もいくつかありました。(堕ちたら死ぬ)

また、あまり人気がないせいかトレースが少なく、道中の看板も三か所くらい壊れたままでした。

倒木が大きく登山道を塞いでいる箇所などもあり、あまり整備されてない印象でしたね。

これ結構事故起きてるやろ…と思って後で調べてみたんですが、実際、去年の10月、11月と相次いで滑落死亡事故が起きてました。

→ https://www.tokyo-np.co.jp/article/293591

下山ルートが異なるので参考にならないかもしれませんが、日本山岳会のホームページでも川乗山は難易度☆4にランク付けされています。

→ 09.川乗橋から人気の川苔山に登り赤杭尾根

そんな非常に怖い山(なぜか初心者向けって案内してるサイトも多いけど)な上に、道中は高木に囲まれてほぼ景観が望めず、お手洗いもない。上級者向けの山だと感じました。

しかしそんな『山登りの恐怖』を教えてくれた川乗山は、私の登山経験をワンランクアップさせてくれたように思います。

あ、あとそういえば、道中3か所くらい奇妙なものを見たんですよ。こういうの↓

引用元:https://www.bepal.net/archives/231248

『登山客がなんか記念に積んでいくのかな』くらいしか思ってなかったんですが、これも後から調べるとケルンといって、道しるべや滑落事故者への慰霊のために作られるモニュメントらしいです。

つまり…もしかするとコレがある場所で滑落死亡事故があったかもしれないということ。

後から知って、思わず背筋がゾワゾワしてしまいました。

ちょっとしたホラー体験。

次はやさしい山にしようっと!(逃避)

宣伝になりますけど、今回Naturehikeネイチャーハイクのロングゲイターを使用しました。

私は中華製品はあまり信頼しないタチなのですが、Naturehikeは最近テント事業でシェアを伸ばしてきており、非常にモノはしっかりしていました。靴に雪や小石が入ることは全くなく、沢に足突っ込んでもサラッサラでした。

ハイブランドに比べて爆安なのでおススメです☆↓