【4630万円誤送金】田口翔容疑者を逮捕

山口県・阿武町あぶちょうで24歳の男性にコロナ給付金4630万円を誤って振り込み返還を求めている問題。ついに容疑者が逮捕されましたので事件の概要をまとめてみました。

事件の発端

そもそもこの事件は何故起きたのか。それは2022年4月8日、阿武町の職員が本来は463世帯に10万円づつコロナ給付金を配布するはずが、1世帯に4630万円を給付するという誤った振込依頼書を作成してしまったのが原因です。

この振込依頼書は町長がメクラでハンコを押して銀行へ。銀行が受け付けた内容で処理を行った結果、偶然、田口容疑者の元へ本来受け取る10万円+誤入金分4630万円が振り込まれてしまったのです。

二者確認が機能していなかったり、お金を扱う大事な業務を新人にやらせていたりとあまりに杜撰さが目立つ阿武町のミス。これは阿武町側が悪いところもあると言わざるを得ませんね。

その後、さすがにおかしいと思った山口銀行の職員が役場に確認の電話連絡をしたことでミスが発覚。役場は即座に対応を取り、田口容疑者の自宅へ向かい、謝罪と返金の依頼をしたそうです。これは素早い判断だったと言えるでしょう。

当初、田口容疑者は驚いて返還に応じる姿勢を見せました。その後、組み戻し手続きをする為、町の職員と一緒に宇部市内の銀行へ向かいました。その距離は車へ約2時間ほど。ド田舎ですね。

しかしやっと銀行に着いたは良いものの、その2時間という時間は田口容疑者の心の中の"欲望"が首をもたげるのに十分な時間だったのでしょう。『やはり今日は手続きしない。後日公文書を送ってくれ』と言い放ち、彼は銀行の入口の前で踵を返し、手続きを拒否してしまいました。ここから問題が複雑化していくことになったのです。

速攻で使い込んだ田口容疑者

ここから一気に豹変した田口容疑者。彼は一転して『役場の人間に非がある』と言い出し、母親の説得も無視して一時的に姿をくらませます。

その後、あらかじめ役場の説明によって『誤って振り込まれたお金』と知りながら使い込みが始まりました。そのペースのすさまじさや否や。銀行側は一度振り込まれた預金を勝手に凍結することは出来ませんから、指をくわえて見ていることしか出来ません。

定期的にデビット決済で約68~130万づつを引き出し、色んな会社へ多額の送金しています。このお金は本人曰く、全て海外のネットカジノに使ったお金とのこと。

まるで火がついたように連日連夜お金を引き出してネットカジノに使い込んでおり、その結果、約10日後の18日には残高が6万円にまで減ってしまっています。つまり田口容疑者は10日間で4630万をほとんどスったということに…。

これには『ネットカジノに使ったというのはウソで、本当はどこかに貯めこんでいるんじゃないか』『いくらなんでも全額スったというのは信じられない、少しは儲けが残ってるんじゃないか』といったウワサが立っています。どちらにせよ、悪意があって公金を使い込んだのは事実でしょう。

その後、21日に偶然田口容疑者を発見して役場の人間が交渉した時はすでに開き直っており、『お金は動かした。もう戻せない。犯罪になることはわかっている。罪は償う』と述べています。

最貧困層に転がり込んだ大金

上記の通帳記録で目を引くのは誤入金される前の口座残高が665円しかないところ。ほぼ無一文。そもそも今回のコロナ給付金が『住民税非課税世帯』向けなので、元から貧困層であったのは想像に難くないですが、それでも驚きです。ちなみに住民税が非課税になる条件は『生活保護を受けている』、『前年の年収が45万円以下』など。

田口容疑者は2020年末から山口県萩市のホームセンターで働いていました。一応仕事を持ってるのにこんだけ貯金がないのは、よっぽど普段から金遣いが荒いか給与がアルバイト並みに低かったんでしょうね。ちなみにホームセンターは『給付金の件でもめていて、店に迷惑がかかるから』という理由で誤入金発覚直後に辞めています。

また、田口容疑者は阿武町の『空き家バンク』制度を利用して県外から移住してきた人物です。この空き家バンク制度というのは地方の過疎化を防ぐ為に空き家を貸し出し、地元に貢献してもらえれば毎月15万円が町から支給されるという制度です。

田口容疑者の自宅。確かに空き家にしとくにはもったいない立派なお家。

地方を活性化するという意味で良い制度だと思いますが、コロナ禍で移住希望者が増えている現状を冷静に捉えれば、目先のお金が必要で移住を決める方が多いようです。ちなみに東京都で暮らしてる人が移住すると単身者で60万円、世帯で100万円が即時支給されるそうな。

どちらにせよ田口容疑者は『最貧困層だった』と言って差し支えないでしょう。そんな人間のもとに転がり込んだ4000万円という途方もない金額。精神を狂わせるには十分ですよね。

お金への執着がすごかった

田口容疑者は元々、お金への執着心が非常に強かったようです。一体どんな幼少期を過ごしたのか分かりませんが、小学校の卒業アルバムではこんなことを書いています。

Q:もし地球最後の日が来たらどうする?
A:持ち金を使い果たす

Q:もしタイムマシンがあったら何をする?
A:ロト6の当たり番号を見に未来へ行く

Q:将来の夢は?
A:造幣局の職員

なんで小学生がロト6とか知ってるんだってツッコミたくなりますけど、幼少期からこんな願いを書き立てるということは、あまり裕福な家庭ではなかったのかもしれませんね。貧困の連鎖ってヤツかもしれません。

こんなにお金への執着心が強いのになんでギャンブル狂なんでしょうね…。コツコツ貯めるのは嫌で、一発ドカンと一念発起するのを夢見てたのかもしれませんね。まぁそんな闇を抱えている人間へ偶然大金が振り込まれてしまったのは奇跡的な悪夢と言って差し支えないでしょう。

ついに逮捕へと

もともとこの事件、誤って振り込んだのはあくまで阿武町側である為、何らかの罪で刑事告訴するのは難しいと思われていました。

全く返還に応じない田口容疑者に業を煮やして、5月12日に阿武町側は民事訴訟を起こしていますが、果たして誤入金が不当利益に該当するのかどうか。振り込んだ側に責任は全くないのか。正直言ってスンナリお金を返してもらえるとは限らない状況だったと思います。(というかもう使っちゃってたら無いし)

ところが5月18日、事態は一変します。田口容疑者が電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕されたのです。これは阿武町側も事前に感知していなかったようで、町長が『驚いた』とコメントしています。容疑の概要は下記の通り。

《本年4月、自己名義の銀行口座に阿武町から入金された4,630万円が阿武町のミスにより誤入金されたものであることを知りながら、自身のスマートフォンを操作してオンライン決済サービスを利用し、自己名義の口座から決済代行業者の口座に400万円を振り替えることにより、財産上不法の利益を得たもの》

電子計算機使用詐欺は詐欺罪の類型で、最大10年の懲役が科される罪です。もし有罪判決が出るようなら、執行猶予が付いたとしても名前が公表された前科者となってしまいますので、今後の人生に大きく響くのは間違いないでしょう。(まあ無実判定されてもダメージでかいと思いますが)

こちらが田口容疑者。ウェイ系に見える。

もし本当に使い切ったのであれば返金することは困難でしょうが、有罪判決ならば訴訟費用等合わせて約5000万円の返済義務を負って生きていくことになります。彼はどこまで予測していたのでしょうか。

お金の魔力は簡単に人を狂わせてしまうんだわさ