なぜ家庭用ゲームはソシャゲに勝てないのか

皆さん、ゲームしてますか?

恐らく、プレイステーションやニンテンドースイッチまでは持ってないにせよ、スマホで何らかのゲームを遊んだことがある人はかなりたくさんいるんじゃないでしょうか。

昨今ではスマートフォンの性能が日進月歩で上がっており、かなりクオリティの高いゲームもストアに並ぶようになりました。

一方、家庭用ゲームも堅調に市場を占めていますが、その勢いはソシャゲに封殺されつつあります。

本日はこのように、家庭用ゲーム機がソシャゲに市場を奪われつつある背景を考察してみたいと思います。

ゲーム市場はソシャゲが3分の2を占めている

コロナ禍における巣ごもり需要が増加したせいか、近年では家庭用ゲーム機ユーザーがかなり増加傾向にあります。しかしそれを上回って市場を占めているのがソシャゲです。

2020年の調査では、ゲームを普段遊ぶ人は国内で約5200万人。そのうち、ソシャゲで遊んでる人は約4000万人もいるという結果になりました。この数字には、パソコンゲームや家庭用ゲームを併用して遊んでいる人たちも含まれます。

引用元:ファミ通ゲーム白書2021

引用元:ファミ通ゲーム白書2021

セガサターンの敗北から考えてみる

昔、平成冒頭の頃、ゲームといえば『ゲームセンター』か『スーパーファミコン』、『メガドライブ』が主な選択肢でした。西暦にすると1990年初頭ですね。スマホはおろか携帯電話すらほぼ存在していない時代。

この時期、次世代ゲーム機という鳴り物入りで発売されたのが元祖プレイステーションとセガサターンです。プレイステーションはソニーから、セガサターンはSEGAから発売されました。

当初は『バーチャファイター』の人気によってセガサターンが優勢だったものの、最終的にはプレイステーションに『ファイナルファンタジー』や『ドラゴンクエスト』といった有力コンテンツを奪われ、セガサターンはいまいちシェアが伸びませんでした。

その後、成人用ゲームを認可するなど独特の路線で戦い、いくつもの名作を輩出したセガサターンですが、最終的にはプレイステーションに敗北しSEGAは家庭用ゲーム機市場から撤退します。

プレイステーションより値段が高かったなどの要因もありますが、私はセガサターンが敗北した一番の理由は『サードパーティの開発のし易さ』にあると思います。

260 名前:名無しさん 投稿日:2017/07/06(木) 10:07:00.58 ID:7rs1oqgq0
初期開発機材がクソ
コンパイラが片側CPUしか使えないコードしか吐けない
ツインCPU使うには人力で同期考えながらアセンブラコード書くしかない
(昔からのアケ開発経験者向き)
初期のC言語ライブラリもクソ杉 重い (セガ「アセンブラでがんばってね」)
コード開発はWin使えるけどグラとサウンドツールMacだけじゃねーか。
うちの会社Macねーわ。どーすんの?

PS開発楽杉^^
全部Winで開発できる楽杉^^ みんないそげーー参入しろーー
とりあえず加算半透明重ねまくればSSよりグラ綺麗に見えてライト層騙せる^^

数年後・・・・
セガ「あの、あの、まともな開発機材とライブラリ用意しました!!」
サード「おせーよ」

当時ペーペーの開発者だった俺目線の思い出

引用元:2ちゃんねる

上記は一番分かりやすかったので2ちゃんねるの書き込みから引用しましたが、要約するとセガサターンのソフトは開発がとても大変だったということです。本体の性能はプレイステーションよりセガサターンの方が高かったのですが、プログラミングが複雑過ぎて、性能をフルに生かしたゲームというのはほとんど発売出来なかったようです。同じような事情をいろんな『開発秘話』でたくさん垣間見ることができます。

例えるなら、乗りこなすのが非常に難しいスーパーカーがセガサターンで、誰でも乗れるオートマ普通車がプレイステーションといったところでしょうか。

スーパーカーのドライビングテクニックを持っている人間は限られますし、教育するのにも非常にコストがかかります。また、運転が複雑であれば事故、すなわちバグなどのリスクも高まりますね。というわけで、ほとんどのサードパーティは開発が容易なプレイステーション市場を選択してしまったのです。

このような現象は、現代の家庭用ゲーム機とソシャゲの間でも起きていると思います。

ソシャゲは開発が楽

家庭用ゲームに比べてソシャゲの開発が楽なのは想像に難くありません。描画スペックとしてはどうしても家庭用ゲーム機に劣りますから、Unityあたりで作ったゲームで十分キレイに見えます。

それにあんまり細かいこと考えずに作れるんです。それは基本的にソシャゲに求められているものが家庭用ゲームと根本的に異なるからです。

例えば『ドラゴンクエスト』を例に取ってみましょう。誰もが知る国産RPGです。ドラゴンクエストはまず主人公がいて、仲間を集め、様々なダンジョンを制覇して冒険を繰り広げ、物語を紡いで魔王を倒し世界を平和にするというのがシリーズ共通の流れです。

そこには主人公が冒険に出て魔王を倒す一連のストーリーを考える人、感動のエンディングに音楽を添える人、冒険のバランスを考えて敵の強さを調整する人など、いろんな開発スタッフが必要になります。

一方、ソシャゲというのは基本的にエンディングはありませんから、一連のストーリーを考える必要がありませんし、エンディングに音楽を添える人も必要ありません。敵の強さも『課金すれば倒せる』くらいのザックリした調整でオッケーです。

もちろん、ソシャゲにはソシャゲなりの苦労があると思いますが、基本的にソシャゲが求めるのは『同じことの繰り返し』であり、『中毒性と課金への誘導』です。その為、ゲームシステムも必ずどこかで見たような作りであることが多いです。ガチャを引いてキャラを強化、どのソシャゲも一緒。新しい工夫を考える必要なし。

だからソシャゲは開発が楽、しかも課金コンテンツが一発大当たりすれば大儲け出来るので『数撃ちゃ当たる』状態で乱立してるんです。

韓国発のソシャゲ『鬼殺の剣』はリリース後5日でサービス修了した。
原因は一目瞭然だが、昨今ではこうした『粗製ソシャゲ』が乱立している。

ソシャゲは手軽に楽しめる

ここまで、まるで家庭用ゲームを賛美しているように聞こえるかもしれませんが、ソシャゲにだってメリットはたくさんあります。それは電車でも公園でもスマホ一台あればパッと楽しめるお手軽さです。

例えば、私も実際にプレイしましたがホラー鬼ごっこゲームである『デッドバイデイライト』をソシャゲに転嫁した『第五人格』というゲームがあります。

第五人格はデッドバイデイライトに比べてキャラが可愛く、またスマートフォンで操作しやすいよう簡易化されており、一回ごとの勝負の時間も短くなるよう設計されています。

私はこういったゲームはソシャゲの方が利点が高いように感じます。

まず、『鬼ごっこ』というゲームシステムがそもそも単純で、それほど高度なスペックのハードやコントローラーを必要としないこと、またプレステやスイッチは持ってないけどスマホはある、というライト層を取り込むことで、いわゆる『ガチ勢』ばかりの環境を回避し、流動性の高いオンライン環境を構築できること。

同じようなゲームに荒野行動とかもありますね。まあ真剣にやってる人たちをライト層扱いすると怒られそうですが、同じことを繰り返すゲーム、いわゆるMO型のゲームはソシャゲの方が有利だと思います。

射幸感を気軽に満たせる

消費者行動研究者のR.Celciは、プレイヤーがゲームにのめり込む理由を、操作技術の向上による自己効力感(つまりゲームがうまくなることの満足感)や目標達成による喜びから来ると論じています。

また、東京家政学院大学の加地雄一は『課金ガチャの心理学』で、ガチャを引く心理について『新しいキャラが欲しい』、『ゲームを有利に進めたい』といった動機が上位に来るとの研究結果を発表しています。

これらを鑑みるとソシャゲは自己効力感や達成感を味わう機会が家庭用ゲームよりお手軽です。

例えば家庭用ゲームとして一世を風靡した大作『エルデンリング』はいわゆる死にゲーと呼ばれるジャンルで、超がつくほど難しいダンジョンやボスを苦労して倒す(それこそ100回、200回と挑んで)ことで非常に強い自己効力感を得られるゲームです。

エルデンリングはすでに1200万本以上を売り上げており、これは『どうぶつの森』や『ファイナルファンタジー』を超える凄まじい記録です。一本6000円としても720億円を売り上げていることになります。

一方、ソシャゲはどうでしょうか。キラーコンテンツとして発表され社会現象にもなった『ウマ娘』はすでに1000億円以上の売り上げを達成していることが報じられています。

この差を説明する要因として存在するのは、やはり課金ガチャの有無です。エルデンリングは自己効力感を得る為には自分でゲームが上手くなるしかありませんが、ウマ娘はぶっちゃけ課金さえすれば上位ランクに食い込むことが出来ます。

時間の無い現代人にとって、手間暇をお金で解決して気軽に欲しいキャラをゲットしたり、能力を上げて競争相手を打ち負かしたりといった経験が出来るのは、まさにソシャゲの利点であり家庭用ゲームが勝てない理屈の一つなのです。

昨今のソシャゲはプレイ状況を手軽にSNSでシェア出来るようになっており、周囲から賞賛されることによって自己顕示欲を満たしやすいのも要因の一つだと思います。

つまり、何十時間もかけてキャラを育て、技術を磨いて敵を打ち負かすエルデンリングより、お金で解決して全能感を気軽に得られるウマ娘の方が、ゲーム市場ではウケがいいということですね。ちょっと暴論ですが。

家庭用ゲームの今後

色々と推論を述べましたが家庭用ゲームは完全にソシャゲに食われるということはなく、将来的には住み分けが必要になってくるかと思います。

例えば動きの激しいアクションゲームや格闘ゲームなんかはソシャゲに不向きです。ポチポチタップするより専用コントローラーの方が動かしやすいですから。また、美麗なグラフィックや大容量のデータが必要になるオープンワールドRPGなどもソシャゲでは出せないでしょう。

一方、『逆転裁判』のようなストーリーテラー方式だったり、『パズドラ』に代表されるようなパズルゲーム、また量産型の放置系ゲームなども現在のままソシャゲがメインになって稼働していくことでしょうね。

あとはオトナ向けのZ指定ゲームもソシャゲでは出せませんね。アップルストアやグーグルプレイはエロ、グロ系はアウトですから成人向けコンテンツも家庭用ゲームが主権を握っていくでしょう。

しかし憂慮すると、問題はサードパーティがどこまで耐えてくれるかというところでしょうか。前述のようにソシャゲは開発が楽です。そして課金コンテンツが一発当たれば笑っちゃうほど儲かります。

家庭用ゲームは一生懸命コツコツ作っても、ハズしたら損害が大きいのでハイリスクローリターンと言わざるを得ません。

事実、ニンテンドーやスクウェア・エニックスなどの大御所も近年はかなりソシャゲに力を入れています。願わくば、ソシャゲ開発専門に転向したりしないことを祈りたいものです。

要はエルデンリング面白いよっていう記事でした(違う