あおり運転する人の心理

最近よくニュースになるあおり運転、怖いですよね。

私は年に数回、レンタカーで運転する程度ですが、それでも高速道路であおられたことがあります。

あれは友人とどこかに遊びに行った帰り、結構夜遅い時間だったと思います。首都高で突然、後ろの車が猛烈にハイビーム&パッシングを食らわせて来ました。『うわっ!』と叫ぶほど車内は真っ白になり、一時的に前が見えなくなりました。本当に危険な状態だったと思います。

とりあえず道を譲り顔を覗き込むと、帽子をかぶった若いお兄さん。スポーツカーに乗っていました。その後猛スピードで前方に躍り出たかと思うと、今度は急ブレーキ。ジャンクションの一車線のところだったと思います。危うく追突するところでした。(命が惜しくないのか?)

不思議だったのは全くあおられる心当たりがなかったこと。別に乱暴な運転はしてませんし、ノロノロ走っていたワケでもありません。首都高バトルがしたいのかなと思ったんですがこっちの車種はヴィッツだし…。何か教えてくれようとしてるのかなとも思ったけど自分の車におかしなところは特に見つからず。怖いというより不気味な体験でしたね。

そんな体験に思いを巡らせながら、今日はあおり運転する人の心理を研究してみました。

あおられた経験を持つ人は多い

たまにしか運転しない私ですら経験があるので、毎日運転する人とかどーなってるんだ?と思いきや、案の定6割以上のドライバーが『過去にあおられた経験がある』と回答しています。2019年の一年間に限定しても実にドライバーの4人に1人があおられた経験を持っているのです。(チューリッヒ保険調べ)

内容としては車両を接近させてくるいわゆる『車間詰め』、『幅寄せ』、その他に必要のないハイビームをされたなど。

2020年6月に道路交通法が改正され,妨害運転罪が創設された為にあおり運転が厳罰化されましたが、それでも6月~12月の半年間に57件もの逮捕者が出ています。いかにあおり運転が日常的に発生しているかわかりますね。

法改正のきっかけを作った石橋容疑者。あおり運転の結果2人を死傷させ懲役18年に。

若者は『攻撃』で老人は『反撃』

日本国内の 17,715 人を対象に調査した研究によりますと、ノロノロした車に車間距離を詰めるなど、攻撃的な運転をするのは若年層に多く見られたそうです。そういった傾向は年齢が上昇するにつれ、明確に低下しました。つまり若い人ほどヤンチャな運転をするってこと。

しかし、じゃあ老人の運転マナーが良いのかと言えば決してそうではなく、『自分の運転を妨害された』、『他人が交通違反しているのを見た』場合では、年長者の方が強い怒りを感じるケースが多かったそうです。

これの心理的分解として、若者は衝動的な怒りを感じて攻撃的に振舞いますが、年長者は自分の中に『正しい運転』の基準が強固に存在し、それにそぐわない場面を見ると『しつけ』のような意味合いで攻撃するということです。どっちも攻撃ですが、老人の場合はあくまで『自分が正義』と思っているということです。

なお、どのようなケースでも、女性より男性の方が攻撃的に振舞うケースが多かったそうです。

揉めた末に軽トラックで女性を轢いた老人。逮捕後、終始『相手がおかしい』と弁明。

車の車種が関係する!?

2016年~2017年までの危険運転致死傷罪(妨害目的)を適用した送致事件を分析した研究では、加害車両(四輪)の価格帯は 4 割が 500 万円以上、約 3 割が 200 万円から 499万円、約 2 割が 200 万円未満であったことを報告しており、逆に被害車両(四輪)の価格帯では,500 万円以上は 1 割に過ぎず,200 万円から 499 万円が 4 割、200 万円未満が 3 割 5 分だったそうです。つまり安い車ほどあおられやすいっていうこと。

この車の車種とあおられやすさの研究はなかなか興味深く、他にもトヨタのV8クラウン(高い車)とスバルの軽自動車であおられやすさの実験をしたところ、明確に軽自動車の方があおられやすかったとのことです。

但し、初心者マークをつけた軽自動車とクラウンで試したところ、今度は結果が逆転し、初心者マークをつけたクラウンの方があおられやすかったそうな。実に興味深いですね。

あおる人はセダンに乗りたがるらしい。なぜか。

運転者に抱くイメージ

車種の件の続きになりますが、『ドライバーに抱くイメージと実際の運転技術が乖離かいりしているほどあおられやすい』という研究結果があります。

車種種類あおられやすさ
86スポーツカー高い
CR-Zコンパクトクーペ普通
N-BOX軽自動車普通
キャリィ軽トラック低い
ER-4nオートバイ低い
『青信号で5秒発進しない』という実験をした結果の一覧。

一覧を見てわかる通り、マンガ『イニシャルD』などで有名なハチロクほどあおられやすく、軽トラックのキャリィはあおられにくいという結果が出ました。

これの要因として大多数の人は『キャリィは老人が運転しているイメージ』を抱き、高齢者(と勝手に思った相手)に寛容な反応を示したそうです。

また、これと別に『相手の顔が見える』バイクに対してもクラクションを鳴らすなどの行動は低減したそうです。他の研究でもオープンカーほどあおられにくかったり、逆にカーテンを閉めている車ほどあおられやすいという結果があり、相手の顔が見えないほどあおりにいってしまう、つまり匿名性が関係するのは間違いないようです。ネットと同じですね。

このことから、初心者マークのクラウンがあおられやすかった研究と合わせて考えると,車両や運転者から抱く運転イメージと実際の挙動の乖離が大きい場合に、後続車は強く怒りを感じる可能性があります。

後方バンパーに貼るステッカーにもあおり運転を減らす効果があったそうな。

あおられたと勘違い

横道に逸れますが、そもそもあおりじゃないのにあおられてると勘違いするケースがあります。車同士のコミュニケーションというのはクラクションやウインカーで行いますので、初心者であるほどパッシングやハザードランプの意味がわからず、『あおられた』と思い込んでしまう場合があるのです。また、初心者ドライバーであるほどクラクションを鳴らす間隔が長い傾向があるそうです。

パッシングの意味の例

・先行車に追い越し意図を知らせる
・他車に進路を譲ってあげることを知らせる
・他車に進路を譲りたくないことを知らせる
・対向車の消灯忘れや点灯忘れ、ハイビームであることを伝える
・この先での事故発生や取り締まり実施を知らせる

しかしまぁ、だからといって『勘違いする方が悪い』と思わず、『コレをしたら相手がどう受け取るか』を考えて行動する方が優れたドライバーであると言えるでしょう。あおり運転するドライバーというのは、そういった未来予測する能力が低いケースが多いです。

2022年5月、クラクションを鳴らされたというだけで37歳の男性が老人を撲殺する事件が起きた。

まとめ

本日はあおり運転をする人の心理を記事にしました。

  • 年齢によってあおる目的が異なる
  • 車種によってあおられやすさは明確に異なる
  • あおる側が運転者に抱くイメージが関係する
  • あおられたと勘違いして逆ギレするケースもある

参考文献→ あおり運転に関する研究の概観と抑止策の提案

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