どう変わる?未成年の年齢引き下げ【2022年4月から】

2018年6月、民法の定める成年年齢を20歳から18歳に引き下げる「民法の一部を改正する法律」が成立しました。改正法は、2022年4月1日から施行されます。

つまり、4月から18歳、19歳の少年少女は法的にオトナと同じ扱いになるということです。この改正によって我々にどんな影響があるんでしょうか。まとめてみました。

そもそも何故引き下げるのか

法務省はこのように説明しています。

我が国における成年年齢は,明治9年以来,20歳とされています。
近年,憲法改正国民投票の投票権年齢や,公職選挙法の選挙権年齢などが18歳と定められ,国政上の重要な事項の判断に関して,18歳,19歳の方を大人として扱うという政策が進められてきました。こうした政策を踏まえ,市民生活に関する基本法である民法においても,18歳以上の人を大人として取り扱うのが適当ではないかという議論がされるようになりました。世界的にも,成年年齢を18歳とするのが主流です。  成年年齢を18歳に引き下げることは,18歳,19歳の若者の自己決定権を尊重するものであり,その積極的な社会参加を促すことになると考えられます。

引用元:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00238.html

簡単に言えば『外国を真似しました!』ってことでしょうか。いやそんな単純な話ではないと思いますけども。まぁ既に投票権は18~19歳に開かれていたりしますので、その流れを汲んでってことでしょうね。

制限行為能力者ではなくなる

大体の社会人なら知ってると思いますが、物事は契約で成り立っています。自転車を買う、スマホを買う…どれもこれも"契約"です。クレジットカードを作ったりエステに行ったりするのも契約です。

未成年者はオトナに比べると判断能力が低いとされる為、いくつか例外がありますが法定代理人の許可無しに勝手に契約した取引について、取り消しを行うことが出来ます。この法定代理人っていうのはフツーは親のことです。

第三節 行為能力
(成年)
第四条 年齢二十歳をもって、成年とする。
(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

引用元:民法(明治二十九年法律第八十九号)(令和三年法律第三十七号による改正)

つまり、18歳の大学生が親の許可なしに勝手にローンを組んでプリウスを買っても、後から『やっぱ返しまぁす!w』と言って車をトヨタに返して払ったお金を全部返してもらうことが出来ます。この時、車を新品にしたりする必要はなくボロボロに乗り回していてもそのまま返してOKです。

トヨタからすると溜まったもんじゃないですよね。だからフツーは未成年者には車を売らないか、『親権者同意書』という親の許可をもらった証を受け取ります。

これが4月から未成年者の年齢が引き下げられることにより、18~19歳の少年少女は契約を取り消すことが出来なくなります。親に泣きついてもダメってこと。

詐欺が横行する懸念

今回の法改正で想像出来るのは、これらの少年少女を狙った詐欺まがいの商売が登場してくることでしょう。例えば一人暮らしの大学生の家に急にコワモテのおっさんがやって来て、『この水道の浄水器、今なら100万円のところが半額の50万円!買ってよ!』って売り付けて来たり、ホスト風の男が渋谷の街頭で『君かわいいね!モデルの専属契約しない?』と言い寄って来て応じたらAV女優にされたりみたいな。

今でもそんな詐欺はそこかしこにありますが、取り消しの法的要件が一つ消え去ることによって悪徳業者には更に"やりやすい"環境になります。

まあ訪問販売とかは別の法的制約があるので一概にどうとは言えないですが、『元未成年者を狙った詐欺』というのは絶対に出て来ると思います。これは法務省も公式に予想していることです。被害者にならないように気を付けましょう。

近年はSNSを利用した悪質なネットワークビジネスが特に流行っている。

外れるのはあくまで4月から

18~19歳の方が制限行為能力者でなくなるのは、あくまで2022年4月からです。つまり、3月までに何かしら契約をして、4月を過ぎて『取り消ししたい』と申し出た場合に業者から『4月からあなたは未成年者ではないんで無理で~すw』と言われてもそれはウソです。契約日が3月以前なら取り消し可能です。注意しましょう。

法律が改正されてもダメな場合はある

これは予想ですが、法律が改正されて18歳で家を買ったり車を買ったりすることが出来るようになっても、実際は契約を結べるケースというのは少ないんじゃないかなと思います。法的にOKだからと言って、必ず業者が取引に応じなければならないということではありませんからね。そこは業者の規定次第です。

18歳~19歳の方の場合、生活基盤が不安定で、社会経験が少なくトラブルが多いというのが一般認識です。業種は内緒ですが、私の周りでも20歳未満の顧客はNGです。これは4月以降も据え置きの方針です。詐欺まがいの業者や契約トラブルの被害が少ない商売の業者なら別ですが、堅実的な業者はまぁ応じないんじゃないかと思います。なので『法的にOKか』と『売買やサービスを受けられるか』というのは別問題だと認識しておいた方がいいでしょう。

お酒やタバコは変わらず20歳から

タバコは未成年は吸っちゃダメよ、というのは『未成年者喫煙禁止法』という法律で定められています。お酒についても同様で『未成年者飲酒禁止法』という法律でNGとされています。

法律の名前だけ見ると『未成年じゃなくなるんだから酒もタバコもOKやん!やったぜ!』と思いますが、2022年4月からこれらの法律は『二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律』と『二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律』と名称が変わり、『20歳未満はお酒もタバコもダメよ』という内容に定められます。つまり実質的な禁止範囲は現行のままとなりますので、相変わらず19歳以下の人はお酒もタバコもNGです。承太郎のマネしちゃダメ。トホホ。

引用元:https://www.niwakajikomi.com/entry/jojo/vsdarby/1

ギャンブルも変わらず20歳から

例えば競馬で賭けるには馬券の購入が必要ですが、現行の競馬法では『未成年者は馬券を買うことも、譲り受けることも出来ない』と定められています。この法律も2022年4月から未成年者ではなく20歳未満にシフトしますので、相変わらず20歳未満の人は馬券を買ったりは出来ません。これは競艇や競輪などでも一緒です。

しかしパチスロは元から18歳以上であれば入場が許可されてますので、従来と関係なく遊ぶことが出来ます。若いうちからパチスロにハマるのは個人的にあんまりおススメしませんけどね。

国家資格を持つ職業に就職出来る

国家資格が必要な職業はこれまで成年者、つまり20歳以上でないと就くことが出来ませんでした。しかしこれらを制約する条文は据え置きになりますので、18~19歳でもお医者さんになったり公認会計士になったりすることが出来るようになります。(もちろん国家試験をパスする必要がありますけども)

そのうち、18歳でお医者さんなんていう天才が登場してくるかもしれませんね。

国民年金は20歳からでOK

20歳を超えると国民年金という謎の税金が毎月国に取られることになりますが、この制約はあくまで20歳からのままとなりますので、2022年4月以降も変わりません。

まあフツー考えて18歳~19歳ってまだ学生か、新社会人で給料も安いですから年金支払えって言われても無理ですよね。どうせ払ってもロクに戻って来ないだろうし。

女性は18歳から結婚OKになる

未成年者の年齢引き下げに伴い、これまで16歳以上であれば結婚出来るとされていた女性の婚姻可能年齢も見直されました。その結果、2022年4月からは男性と同じく18歳以上でないと結婚出来なくなります。

そもそもなんで男は18歳で女は16歳と差があったのか。これは心身の成熟度合いを考慮して定められたものだと謳われています。つまり女の方が男より成熟するのが早いからと考えられていたんですね。

まあダークな意見を言えば女の方が賞味期限が切れるのが早いからって理由もあるかもしれませんし、『姉やは15で嫁にゆき』と童謡で歌われてる通り昔は結婚するの早かったですから。そんな背景もあったのかも。

しかし現代社会では心身だけでなく社会的な成熟度合い、つまり生活能力や社会経験を重視して18歳にまで引き上げられたという訳ですね。

今後は重川茉弥さんみたいな女子高生は登場しなくなる。

成人式はいつになるのか不明

従来、成人式は毎年1月に開催され20歳で参加するのがしきたりでしたが、18歳から"成人"扱いとなると一体どうなるんでしょうか?高校三年生の1月に成人式を迎えることになるんでしょうか?

実はこれについてはハッキリと分かっていません。何故なら、成人式を取り締まる法律というのは特に存在せず、各自治体が各々のルールで開いているからです。

個人的には20歳で成人式をやって、高校や中学の同級生に久しぶりに会って、初めて居酒屋に入ってみる…ってのが成人式の楽しみだと思いますが、今後は18歳を対象に成人式を開く自治体も出て来るかもしれません。まぁそれもそれで楽しそうです。

少年法は大きく変更

少年法…簡単に言えば未成年者が罪を犯した場合、オトナに比べて罪が軽くなる仕組みです。まだ心身が未成熟な少年は矯正教育によって十分に社会復帰することが出来るからだと考えられているからですね。この少年法は今回の改正で大きく変わることになります。

基本的に適用範囲は20歳未満の者で継続となりますが、18~19歳には逆送対象事件の範囲が広がります。また、起訴された場合は18~19歳でも実名報道が解禁されることになります。

例えばですね、現行法では18歳の少年がレイプしまくっても少年院に行って保護観察処分になるのがほとんどなんですが、『あまりに悪ガキ過ぎて手に負えん』と判断された場合、オトナと同じように刑務所に行ったり、死刑になったりするケースが出て来るということです。そしてニュースでも『少年A』とかでなく大々的に実名が報道されることになります。

まとめ

今回の記事では、2022年4月から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることによって、社会生活にどんな影響があるかをまとめました。

分かりやすく法務省のホームページから拾って来た一覧表を貼っておきますので、よろしければご参考下さい。

18歳に変わるもの20歳が維持されるもの
●登録水先人養成施設等の講師(水先法)
●帰化の要件(国籍法)
●社会福祉主事資格(社会福祉法)
●登録海技免許講習実施機関等の講師
(船舶職員及び小型船舶操縦者法)
●登録電子通信移行講習実施機関の講師
(船舶安全法及び船舶職員法の一部を改正する法律)
●10 年用一般旅券の取得(旅券法)
●性別の取扱いの変更の審判
(性同一性障害者の取扱いの特例に関する法律)
●人権擁護委員・民生委員資格
(公職選挙法等の一部を改正する法律(平成 27 年
法律第 43 号))
●分籍(戸籍法)
●公認会計士資格(公認会計士法)
●医師免許(医師法)
●歯科医師免許(歯科医師法)
●獣医師免許(獣医師法)
●司法書士資格
(土地家屋調査士資格(土地家屋調査士法)
●行政書士資格(行政書士法)
●薬剤師免許(薬剤師法)
●行社会保険労務士資格(社会保険労務士法)
…等約 130 法律
●養子をとることができる年齢(民法)
●喫煙年齢(未成年者喫煙禁止法:題名を改正)
●飲酒年齢(未成年者飲酒禁止法:題名を改正)
●小児慢性特定疾病医療費の支給に係る
患児の年齢等(児童福祉法)
●勝馬投票券の購入年齢(競馬法)
●勝者投票券の購入年齢(自転車競技法)
●勝車投票券の購入年齢(小型自動車競走法)
●勝舟投票券の購入年齢(モーターボート競走法)
●アルコール健康障害の定義
(アルコール健康障害対策基本法)
●児童自立生活援助事業の対象となる者の年齢
(児童福祉法)
●船長及び機関長の年齢
(船舶職員及び小型船舶操縦者法)
●猟銃の所持の許可(銃砲刀剣類所持等取締法)
●国民年金の被保険者資格(国民年金法)
●大型、中型免許等(道路交通法)
●特別児童扶養手当の支給対象となる者の年齢
(特別児童扶養手当等の支給に関する法律)
●指定暴力団等への加入強要が禁止される者の年齢
(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)
…等約 20 法律

大人の階段のぉーぼるゥゥゥ!!