SNS上で攻撃的な人はリアルでも攻撃的なのか?

暇つぶしに論文を漁ってたらなかなか面白いのを見つけました。

SNSコミュニケーションの顕在化に関する心理機序について(大和田智文、御幸大聖)

リアルが先?SNSが先?

SNS上で攻撃的な人っていますよね。ある程度の年月SNS上で情報をやり取りしている人ならば誰でも経験があると思います。いきなり知らん人から誹謗中傷のDMが飛んで来たり、発言を全否定する返信が飛んで来たり、なんか知らんけど怒られたり。

SNSと一口に言ってもツイッターやフェイスブック、LINEなどが存在しますが、どれも性質的には似たり寄ったりではないかと思います。中には炎上してる人をひたすら探してバッシングし、ストレス解消してるような危ない人もいます。

そういった人の心理機序ってどうなってるんでしょうか。リアルが元々攻撃的な人間だからSNS上でも攻撃的なんでしょうか。それともSNS上で攻撃的な性格が形成されただけで、リアルだと大人しい人物だったりするんでしょうか。そういった研究がこの論文です。

調査方法

大学生約100人を対象に以下の質問を実施。うち、20名程度はSNSを使ったことがなかったので除外し最終的に80人を相手に調査を実施。

  • リアルでの不適切行為をどの程度許容できるか。
  • ネットでの不適切行為をどの程度許容できるか。
  • SNSをどの程度利用しているか。
  • SNS上で「自分を知ってもらいたい」という欲求がどの程度強いか。

不適切行為というのはリアルであれば『未成年の飲酒』や『万引き』、『拾ったクレジットカードを使った』などなど。
ネットであれば『有名人がバイト先に来たことを写真付きで投稿』や『高速道路を自転車で走っている場面を投稿』、『パトカーの上に乗って遊んでいる写真を投稿』などです。さらっとまとめてますが質問は多岐に渡ります。これをロジスティック回帰分析で調査。

結果

リアルでの不適切行為とネットでの不適切行為との間に強い正の相関がみられました。また、女性より男性の方が許容度が高く、更に自己開示欲求(自分を知ってもらいたいという欲求)が強い人ほど、リアルの不適切行為許容度に弱い相関がみられました。

考察

ここからは一歩踏み込んだ私の考察ですが、この結果を見ると『リアルで万引きや未成年飲酒を許せるような人は、SNS上でも不適切な発言をしたり、炎上するような写真を投稿してしまいがち』ということです。また、不適切な行為、すなわち攻撃的発言をする人はリアルでも攻撃的な発言を日頃している人、ということになります。まあ改めて言われればそりゃそーだって思いますけど。

よく私の周りではネット弁慶なんて言葉流行っていて、『〇〇さんはネットだとイキってるけどリアルだと優しくていい人よ』なんて感想を聞くことがよくありますが、そんなことはあり得ないということが証明されたということですね。

心理機序としてはスタートはやはり『元々リアルで攻撃的な人がSNS上でも攻撃的』ということになります。逆に『SNSの土壌で攻撃的な性格になったからリアルでも攻撃的になるケース』はないということです。

つまりネット上でバイトテロをしちゃう人は、元々しょっちゅうやってる可能性があるということ。

まとめ

リアルでイキってる人はネット上でもイキっている。逆にネットでイキってるけどリアルで大人しいというケースはない、ということが分かりました。また、それらの人はパトカーに乗って遊んでるような不適切な写真を投稿することに対して、心理的な閾値が低いことがわかりました。

更に、攻撃的な性格がネット→リアルの順に反映されるのではなく、リアル→ネットの順に反映されることが分かりました。

とはいえ、重要なポイントですがこちらの論文はサンプル数が大学生80人と非常に少なく、また地域性、年代別傾向なんかも大きく反映されていますからこれが間違いなく正の結果とは言えません。

また、論文の中でも締めくくりに書かれていますが昨今のSNSでは『裏アカウント』なるものが流行しており、通常のアカウントと裏アカウントを持つ者に取って、この質問に対する回答は通常アカウントを想定して実施している可能性があるので、裏アカウントに対してまで調査対象しないと真の結果は得られないのではないか、ともされていますね。

何はともあれ、なかなか興味深い論文でした。

誹謗中傷はダメだわさ!