人狼ゲームに『強い、弱い』は存在しない

※個人の意見です

イルルは5年以上人狼ゲームやってますが、タイトルの件はずっと持論として考えてました。
否定的意見が殺到するのは目に見えてるのであまり主張して来なかったんですが、ここらでこっそり記事にしてみようと思います。どうせこのブログほとんど読まれてないしな!

タイトル

皆さんは、人狼ゲームにおける『強い』とか『弱い』って何だと思いますか?
イルルは長い間人狼を遊んできて、『強い上級者』だとか『弱い初心者』と称される人達に星の数ほど接して来ました。

ですが、結局のところ『強い』って言われてる人って、単純に吊られにくいとか、強弁なだけであるとかで、何を持って強いのかいまいちピンと来なかったのです。

『強い・弱い』の定義とは?

「破綻している占い師に気付けなかったり、黒が露呈してる狼が分からないような奴が弱いと言える」という意見をもらったことがあります。
これは確かに、当時はその通りだなと思いました。初心者に多いですね。

しかしこれって、サッカーで例えれば『どっちが自分のゴールか分からない』とか、『オフサイドの意味が分からない』といったような、(厳しい物言いですが)ゲーム以前の問題なんじゃないかなと思うんですよね。

と言う訳でこういった『セオリーが分からない』という点で強弱はつけられないとしました。
セオリーなんて50回もやればイヤでも覚えますからね。
※月下人狼などのように役職が大量にある場合はちょっと話が変わって来ますが…。

何かを証明するということ

では、『強い・弱い』の尺度は何を用いればいいのでしょうか。
恐らく皆さん同じことを考えていると思いますが、『勝率』で証明するのが一番分かり易くて、且つ的確だとイルルは思います。

心理学の話になりますが、フロイトユングなどの古い時代には、心理学は内観法に頼っていました。それを劇的に変えたのが心理統計という手法です。
難しい話はスルーしますが、例えば『人は怒られると悲しくなる』という事象を分かり易く数字で表すことが出来るのが心理統計です。
統計を用いない論理は、ただの推測、あるいは感想にしか過ぎません。いわゆる直観です。

「僕は人に怒られると悲しい。だからきっとみんなもそうに違いない」っていう論理は何かを証明しているということにはならないでしょう。それはもはやただの”論”です。学術的にはこのような場合、その正当性を表す証拠や保証というものが必要になって来ます。

論理について

人狼ゲームも同じことです。
「私は毎回狼を吊って勝ってる。だから強い」と言い出す人がいたとしましょう。ふむふむ、確かにその通りかもしれません。じゃあ、何回やって何回くらい勝ったの?って聞いた時に「覚えてないけど、昨日も勝ったし、確かその前の日も…」という返事があった時、あなたはどう思いますか?

まあとりあえず、イルルはこのような観点から数字、つまり勝率で『強い・弱い』を測るべきだと思いました。

それじゃあ勝率を見てみよう

残念ながら、各種プレイヤーの勝率を分かり易くまとめたウェブサイトというのは存在しません。出来れば色んなサーバ(レギュレーション)の老若男女のデータがあれば確度が高くなるんですが、そういったものは存在しないです。ログが残らない対面なら尚更。

しかし、オンライン人狼アプリの初作品であり一時期大流行した、人狼オンラインXという環境であれば、300戦以上プレイしたプレイヤーのみに限定し勝率をまとめたwikiが存在します。
人狼オンラインX@wiki

※ひじょ~~~に残念なのですが、このプレイヤーページに記載されたアカウントURLを入力すると、そのプレイヤーの各役職毎の勝率を月別に表示してくれる勝率計算ツールというウェブアプリも存在したのですが、今は消えてしまいました。
こんな感じに表示してくれる神ツールだったんですが。

えー、さて、まず結論から言いますが、このwikiのプレイヤーページを漁ると全プレイヤーの9割方が勝率50%付近に収束しているのが分かると思います。

人狼オンラインXの古参なら誰もが口を揃えて『最強』と呼んでいた雲雀というプレイヤーでさえも、勝率は58%です。
※イルルも雲雀さんと何度か同村したことがありますが、態度が柔和なのに発言が理路整然としていて説得力があり、確かに強いと呼ばれるだけあるなという印象でした。

勝率

いいですか?
ほぼ全てのプレイヤーの勝率が50%付近なのです。
極稀に45%以下や60%以上のプレイヤーもいますが、30%台や70%台の勝率を持つプレイヤーはただの一人も存在しません。
(それに例外的な数値を持つプレイヤーはプレイ回数自体がそもそも少ないです)

とにかく、人狼に強いとか弱いといったものが存在するなら、このように確率は収束しないと思います。
つまり、現状では人狼プレイヤーに強弱があると仮定した場合、その概念は、この45%~55%の間を行ったり来たりして定められているということになります。

より深く調査する為にはもっと多くのサンプルを用意して、専用の統計ソフト(イルルは大学ではSPSSというソフトを使ってました。お値段12万くらい)を使って調査する必要があるんですが、そんな環境がないのとサンプルが少ないことから、そこまでは出来ません。まあそういった意味では本記事も”感想”に過ぎないんですけど。

また、かつて存在した前述の勝率計算ツールで月別の集計をすると、勝率が右肩上がりのプレイヤーというのも存在しないということが分かりました。残念ながらイルルの勝率を元にした3年前のデータしか残っていないのですが、当時はどのプレイヤーでも同じようなグラフを描きました。

将棋やチェス、またはスポーツでも何でもいいですが、一般的に強いとか弱いという概念が存在するゲームでは、やればやるほど勝率は高くなります。運要素が絡む麻雀なんかも同じですね。
教習本を読んだり、上手い人のやり方を学習したり、成長の仕方は人それぞれでしょうが、基本的にはやればやるほど強くなっていくはずです。

しかし人狼ゲームは成長曲線が右肩上がりにはなりません。もし疑うようであれば、勝率が月別に右肩上がりになっている人のデータを探してみて下さい。絶対にありませんから。

さて、これには奇妙な感覚を覚える人もいるかもしれません。人狼を始めたばっかりの初心者と、歴戦の熟練者では盤面考察や人狼を探す戦術も明らかに差があるのに、勝率が大体同じくらいになるというのはどうしてなんでしょうか?

勝率が収束するのは何故か

人狼ゲームというのは非常に多くの不確定要素が絡み合った結果、”勝ち”と”負け”に二分されるゲームです。引き分けというのは存在しません。
大切なのは、このゲームはチーム戦であるということです。大体このゲームをプレイする時は10人~20人程度が多いでしょうが、狐ばっかり引かない限りは基本的にチームで勝利を目指すゲームになります。

不確定要素の例を説明しましょう。
例えば、人狼ゲームを初めてプレイする占い師のAさんと、熟練者の狂人Bさんがいたとします。Aさんは占いCOしますが、Bさんも占いCOをしました。

Aさんは「占い師は一人しかいないはずなので、嘘をついているBさんを占った」と言います。
Bさんは「対抗が人外なのは私目線確定なので、占う意味はなく、グレーを占った」と言います。

さて、セオリー通り動いているのはBさんですね。しかしAさんは初心者が透けていて、『初心者が占いを騙りに出るかな?』というメタも若干働きますね。あなたはどっちを信じるでしょうか?
結論を言えば、どっちを信用する人も出てくるでしょう。

もっと極端な例にして、Aさんがトチ狂って毎日同じBさんを占い続けたとします。
Bさんは非常に優れた論理で村人が期待する通りの占い(騙り)を続けたとしましょう。
村人は誰しもがBさんを本物の占い師だと考えますが、進行権を持つ霊能が言い放ちます。

「偽者がこんな分かり易いはずはないんで、Aさんが真です」

そんでBさんは霊能の指定で吊られます。熟練者なのに、初心者に勝てませんでした。
まあこれはあくまで一例(とはいえこんなケースの村を何十回も見て来ましたが)ですが、『不確定要素』を図にするとこんな感じです。

えー、汚い図ですがお分かり頂けますでしょうか。
真占い師が真を取れるか?狼を占うことが出来るか?騎士は占い師を守れるか?狼は占い師を噛めるか?霊能は狼を吊れるか?村人はミスリードしないか?…などなどを赤い矢印が表しています。
あなたが村に及ぼす範囲は青い矢印くらいのもので、全体の不確定要素に比べて圧倒的に少ないことが分かると思います。

はたまた極端な話にして、あなたがスーパーマンで人狼が毎回100%分かる実力者だったとしましょう。それでも、周囲の人間があなたを初日に吊ってしまったり、狼に襲撃されてしまったら、その推理力も生かすことは出来ないのです。

なのでまぁ、結論を言うと、この不確定要素の渦の中で頑張るのが人狼ゲームという訳ですが、結局のところ勝率はフィフティ・フィフティにほぼ収まる、と言う訳です。

専門的な研究とその考察

上記の論理を補強する為に、より専門的な研究結果をご紹介しておきましょう。
人狼ゲームの前身はマフィアと呼ばれるゲームなのですが、2006年、コンピュータ科学者のMark Braverman, Omid Etesami, Elchanan Mosselの3人がシミュレーションを用いて戦術の最適解を求めました。

マフィア

引用元:wikipedia( https://en.wikipedia.org/wiki/Mafia_(party_game) )

人狼ゲームとMafiaでは役職の呼称が異なりますが、要約するとこのようなことが書いてあります。(大して英語得意なワケじゃないんで間違いがあったら指摘して下さい…)

  • 占い師がいなくとも、それぞれのプレイヤーが合理的な行動を取る場合、ランダム投票が村人側と人狼側の戦略として最適解である。
  • 両方の陣営が同じように勝利する確率を得る為には、両陣営に十分な数のプレイヤーがいて、人狼mの初期数は村人の総数Pの平方根に比例する必要がある。
  • シミュレーションの結果、50人の人狼が10000人の村で勝つ可能性は、約50%である。
  • 但し、占い師が追加された場合、人狼は一定の割合の数を保つ必要がある。
  • 初期プレイヤー数の偶数・奇数が大きな影響を及ぼすが、人狼の数が固定された状態で奇数のプレイヤーがいくら追加されても、人狼側の勝率は低下しない。

この研究結果では複雑過ぎる為に役職を排除し、人狼と村人のみが存在するケースに絞られていますが、全員が合理的に動く熟練者である場合、ランダム投票が最適解だということです。
また、注目すべき点は人狼の数が一定数以上であれば、村側の熟練プレイヤーが奇数でいくら追加されようと人狼側の勝率は下がらないという研究結果です。いかに村人一人が勝敗に寄与出来る範疇が小さいものか、分かると思います。

もちろん、この研究結果は前述の通り役職を含まず、全員が合理的に動く熟練者(パーフェクトプレイヤーと言います)であることの前提なので、実際的な研究結果とは言い難いのですが、私の仮説を考察するに当たって非常に大きな影響を与えた論理です。

蛇足・対面人狼は村人側が有利?

話が脱線しますが、Mafiaのwikipedia記事には面白い仮説が記述されているのでご紹介しましょう。こちらは論文とか示されていませんのでwikipedia記述者の主観的なものかもしれませんが。

Results in live play[edit]
In live (or videoconference[23]) real-time play, the innocents typically win more often than game theory suggests. Several reasons for this have been advanced:
The physiological stress of sustained lying degrades the initial ability of mafioso to deceive the innocents, much more than a model of perfect play would predict, especially if the innocents can get the town emotionally involved in the game’s outcome:
If you’re trying to feign shock or anger, it’s much harder to do over a long period. People accused of something they’re trying to hide will start out feigning outrage – ‘How dare you ask me that?’ But that will start to change to objection rather than shock, as it’s psychologically very difficult to mimic emotion.
— Dr Simon Moore, Wired UK[4]

引用元:wikipedia( https://en.wikipedia.org/wiki/Mafia_(party_game) )

要約すると、対面方式で人狼を遊ぶ場合、ゲーム理論で示唆される結果よりも村人側の方が多く勝つということです。理由としては、人狼は長時間ウソをつき続けると生理的ストレスの負荷が強く、相手を欺く能力が低下するからだとされています。

『人間は嘘がバレた際に、ショックや怒りを長時間模倣することは大変難しく、やがて怒りは異議に変わり始める』という心理学者サイモン・ムーアの言葉も添えられていますね。

また、村人が感情的に村全体を巻き込むことが出来る場合、人狼側が村人を欺く能力が低下する、とも記載されています。村感情出すと強いってことですね。

何を伝えたいのか

さて、長文になりましたが、この記事でイルルがお伝えしたいことは、『人狼なんて運ゲーなんだからテキトーにやろうぜ』ってことでは決してなく、『どんなプレイヤーも平等に勝ち負けの機会は訪れるのだから、結果より過程を楽しみましょう』ということです。

結果より過程

人狼ゲームにおいて、個人のプレイは確実に勝敗に影響する訳であって、当然ながら自陣営全員がテキトーにやってたら勝てるものも勝てません。前述の研究結果の引用も全プレイヤーがパーフェクトプレイヤーである場合の想定ですしね。

しかし、やはり個々の活動の結果が勝敗に寄与する部分はほんの小さなものです。そこにこだわり過ぎてしまって、ギスギスしてしまうのは損だなと思います。ある程度セオリーに沿ってプレイ出来るのであれば、後はプレイングを楽しみましょう、というのが私のお伝えしたいことです。半分は精神論ですけども。

イルルの経験論ですが、やはり勝ち負けにこだわり過ぎるとストレスも溜まるし喧嘩になりがちです。イルルもこの持論を展開するまではめちゃくちゃ勝率にこだわっていた時期がありまして、肝心なところでミスリードする村人を責めまくったり、負けたらすぐ”戦犯”探ししていたようなこともありました。
そうやってストレスを緩和してたんだなと思います。負けを人のせいにすれば楽ですからね。

しかし、ある程度やるだけやったら後は結果は50%50%でついてくると思えば、心に余裕が生まれます。ゲーム本来の”楽しむ”という目的を失わずに済みます。
皆さんも人狼ゲームをしていてイライラしてしまうようなことがあったら、この記事を思い出して頂けると幸甚です。

じゃーね!